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義妹生活1巻の考察と解説 [このライトノベルがすごい!2022]

このライトノベルがすごい!2022で今話題の「義妹生活1巻」の考察と解説をしていきます。

読了された方は気になるポイントだけでも見ていただければ幸いです。

私は既刊3巻まで読了しておりますのでこの1巻のみからでは読み取れない箇所があるかもしれませんがどうかご容赦を。

また、記事の性質上、盛大にネタバレを含みます。

 

あらすじ

高校生の浅村悠太は、親の再婚をきっかけに、学年で一番の美少女・綾瀬沙季と一つ屋根の下で兄妹として暮らすことになった。互いに両親の不仲を見てきたため男女関係に慎重な価値観を持つ2人は、歩み寄りすぎず、対立もせず、適度な距離感を保とうと約束する。

プロローグ

さっきまで感じていた違和感

p27~

「さっきまで感じていた違和感も、それで説明できるわけだ。」と悠太が言っている。

さっきまでの違和感とは沙季の外見とのギャップである。先のページに外見から渋谷を歩いている女であると描かれ、ファミレスでの知的な会話に違和感を抱いたことが分かる。

'’それ'’とは後に沙季が言う兄妹関係の定義を指している。見かけによらずきっちりしていると言った印象を受けたのであろう。

「安心したよ。いま、初めてね」

これは恋愛感情といったものを抱かないで過ごしていくことに同意でき安心している。誠実な人間関係の提案に乗ったのである。

この瞬間に結ばれた兄妹関係が今後肝になっていきます。

6月7日 (日曜日)

すり合わせ

p39~

初めは敬語で話していた悠太が沙季に砕けた口調がいいと言われあっさり直す。

大抵の場合、人間の理解や共感を相手に求めるがそういったものなしに馴れ馴れしく合わせていくことを言っている。

「そ。やっぱり思った通りだ」

沙季も悠太と同じように似たようなスタンスの人間であることを事前から分かっていた。ファミレスであった兄妹定義があっさり決まったため沙季は感じていたのだろう。

後のバイト先から電話がかかってきた時に会話を中断することを許容するのもすり合わせの1つだろう。

結局すり合わせとは事前にお互いの性格であったり、内面をある程度把握し、許容できるラインまでであれば承諾なしに結託することを意味している。何かを提案するときに相手の許可なしに進めて良いし、お互いを知っているためそれについて争いにならないのである。このすり合わせとはこれから兄妹として過ごしていくための初めの一歩として沙季が口に出したのかもしれない。

あったあった。これ、オススメ

p59~

バイトの先輩 読売栞は義妹ができることを知っていた。

自己評価が低すぎる悠太に対し「わたし結構気に入ってるのになぁ、後輩君のこと」と話している。バイトの後輩として気に入っているのか自己評価が低い彼を異性として気に入っているのかは不明である。前頁でナンパから助けた悠太の行動を考えると後者だと思いましたけどね。君は君の思っているよりも私にとってかっこいい人なんだと思ってるよ...と

「男女の科学」という異性との関係が書かれた本を彼女が参考にしていることから可能性としては少なくない。実際彼女は悠太で日記をつけて実証済みだという。

さらに帰り際の「さっきのナンパ男みたいなのに絡まれたら...」のところで彼女は一瞬きょとんとしている。これはかっこいいこと言える人なのにどうして自己評価が低いのだろうとびっくりしたのか、急にそんなこと言われてときめいた の2択になるのではないか。恐らくは後者であると考えている。

6月8日(月曜日)

野球部とブラック企業って似てるよね

p69~

教室で親友の丸友和に沙季について聞く。なぜ沙季について聞いたのか丸から返され悠太は曖昧にした。そんな悠太にそれ以上詰めようとしない丸が気に入っている。これもある意味では先のすり合わせであろう。悠太もまた円滑にすり合わせができる相手を好ましく思っているのである。

ちなみにp45「浅村くんのためになるかな」 は学校で’’売り’’の噂が広まっているため学校での関わりを持つのはやめた方がいいということだろう。売りの噂を持つ自分と関わること、兄妹であることがバレることで悠太の印象が変わってしまうかもしれないと注意喚起している。通常兄妹であればそんなの気にしないだろうが今の新生活が始まったばかりでしかも兄妹関係が公になっていないということで遠慮(配慮)をしているのだろう。

兄として妹にお説教したい、と

p84~

テニスの時間にサボって音楽を聴いている沙季に話しかける悠太。沙季は歯切れ悪そうに答えるがこれは実は音楽を聴いているのではなくて英語のリスニングを聴いている(後に分かる事実)

天真爛漫で元気な女の子奈良坂真綾もここで登場。沙季とは一応友達だそう。

浅村くん、フラットなんだ

p101~

沙季が「ふぅん。浅村くん、フラットなんだ」というのに対し悠太はほんのり嬉しそうな感情が含まれていると感じる。フラットとは平等で裏表のないのような意味であり沙季の母 亜季子に対する印象をそのまま話したことに沙季がそう言った。p102からのフラットじゃない人間に対する想いを話したことからここでは沙季は悠太への好感を、悠太は沙季から好感を得ることができたと感じたのだろう。本質的に2人は似ていたのである。ファミレスでスムーズにすり合わせをできたことから根っこは同じであったのである。p105「他人の期待がめんどくさくて、誰かに期待するのもめんどくさいって気持ちでしょ」からも分かる。

最後の「正解。....ごめんね」の謝罪は新しく家族となったのに悠太や父を心から頼ることのできないことへの罪の意識である。それでも彼女は自立を目指す。以前までの境遇から1人で生き抜く術を身につけたいという思いが彼女にはあったのである。[p236参考]

6月9日 (火曜日)

意識高い系だったなんて

p123~

「自立したい気持ちはわかるけど、妹が理由、っていうのは違うでしょ」

自立するためにお金が必要であることを沙季の気持ちを代弁し読売先輩に伝える。

「この歳で新しく妹までできちゃうと、いつまでも...」と妹が原因であることに対し読売先輩が悠太に伝える。自立したいのは沙季であるため本当は兄がまたは家族まで...であるが。

自分で力で生きていけなかったら誰かに頼っていいのだと読売先輩は考えます。

自立って自分一人で生きていくことだけが自立じゃなくて頼れるような人を自分でみつけることが自立だとどこかで聞いたことがありますがそうゆうことだろうか。

私と境遇似てるし、

p134~

二人とも両親が離婚しそして再婚したという似た境遇

「綾瀬さんって女嫌いだったんだ」とあるがこれは実際は男嫌いの間違いではないだろうか

悠太の母は別の男と不倫をしていたことが原因で離婚し、沙季は父が原因で離婚している(p236参考)からである。

その後の「2人が悪人だったら...」は新しい家族である悠太と父が寛容で気を遣ってくれなかったら何も考えずに人に頼らず自立することができたのに...と皮肉っぽく言っている。自分に気を遣ってくれることが嫌なのである。過去にそんな環境にいなかった彼女はそんな温かさに困惑しているのである。信念をもった彼女はそれでも自立しようとするのである。

6月10日 (水曜日)

今のは、ない

p141~

英語のリスニングに夢中で道路に飛び出してしまうシーン

「誰にも言わないでよね。...それじゃ」

何を言わないのか。もちろん武装していることをである。自立した強い女になるために不良めいた金髪ギャルの外見を装ってるのだと書かれている。

彼女は学業も仕事も完璧な人間になって自立したいのだ。悠太に取って彼女の自立へのこだわりが垣間見れる瞬間であった。

p146「彼女について知れば知るほど、チグハグに組み合わされたパズルが、正しい位置に戻されていくような気がした。」は外見からだと不良の金髪ギャルであることしか分からなく、内面もそれ相応であるという印象から知っていくうちに彼女の本当の気持ちや在り方を理解できていくようなそんなことを意味している。チグハグに組み合わされたパズルが武装であり、武装をバラさないでほしいと悠太に伝えるところからも兄妹としての距離が縮まっていると言えるでしょう。秘密の共有です。

「もちろんいい意味で」 は返事なんてしなくても理解し合えているから。お互いに距離を分かり合えそもそも返事に期待していないということである。距離感の理解と捉えられる。

6月11日 (木曜日)

理解してくれすぎます

p194~

何を理解しているのか。もちろん沙季の気持ちである。ではいったいそれは何なのか。

沙季は自身の無意識な差別的行動に嫌悪感を覚えており、下着を洗われたくないという反射的な思い(羞恥心)からここに発展した。

沙季が「でも、偏見は差別を生む」と言ったのに対し悠太は「綾瀬さんが反射的行動を見直して修正できない人間だとは思わないよ」と返す。

ここからこの理解は沙季への距離感を表しているのだと考えられる。’’でも’’と逆説的に言っているのに対し悠太は普通はそうでも綾瀬さんなら変われるよと優しく告げているのである。沙季は卑屈なことを言いながらもそんな言葉をどこかで期待していたのではないだろうか。このような仮定すると以前の「誰かに期待するのもめんどくさいって気持ちでしょ」と矛盾している。期待したい相手ができた表れではないだろうか。

 

その後に悠太が沙季の部屋から見えた下着を見てしまったことに嫌悪感を覚えていたことからもやはりここでも2人は内面が似たもの同士であることが分かるのではなかろうか。

「浅村くんが反射的行動を見直して修正できない人間だとは思わないしね」と同じように返している。

 

6月12日 (金曜日)

どうしてそんなにお金が必要なの?

p219~

沙季「前にも言ったと思うんだけど。他人の目とか他人の期待とか。そうゆうめんどくさい色々から解放されるためには、独りで生きていけるだけの力が必要なの」

悠太「金が力ってわけか」

p223 「実はこれにはあまり好ましくないが簡単な解決策がある」は悠太が沙季に対しバイト斡旋をするのではなく、料理に対し直接代金を払うと言った方法である。これについての問題点は以降で書かれている。

私のカラダって買えそう?

p226~

新しい家庭が始まってからは沙季が家で料理をし、その交換条件として悠太が高額バイトを探してくるという契約があったが日々成長する沙季に料理に対し悠太は今以上に高額バイトを探すために尽くせない状態だった。要するに悠太はどんどんに対価に見合わなくなっていくことを危惧していた。そんな悠太に対し沙季は納得がいっていない様子であった。

「私のカラダって買えそう?」

沙季は逆に自分の料理では対価として見合っていないと考えていたので身内相手にカラダを売ってお金を得ようとする行動に出たが、そもそも身内でのお金のやりとりでは家計の収入が増えないことを諭します。これが簡単な解決策の問題点である。(解決策ではないが)

p236から沙季の父親の話があり、父が原因で離婚し、今に至ったことが描かれています。

綾瀬沙季の日記

この最後の沙季の日記の部分では答え合わせに近いものが行える。本作品の面白いポイントである。

6月11日の「浅村くんは危険だ。」はどうゆう意味だろうか。新生活でお互いの距離感を掴むためにも悠太の理解力というのは有効に働くはずだが。

ここで考えられるのは

「浅村くんは(私の気持ちを理解しすぎている。だから私のこの気持ちにもすぐに気づいてしまう。だから、)危険だ。」と補足できそうである。

ちなみにこの気持ちとは恋心である。それは6月13日の次の部分から読み取れるのではないだろうか。

「だからこそ、彼を「兄さん」と呼ぶわけにはいかない。」

「いままで感じたことのない気持ちで、自分でも感情に名前をつけられない。気付いたら浅村くんを意識してる。」

兄さんを呼ぶわけにはいかないのだ。一度そう呼んでしまえばこの想いを伝えることができなくなってしまうからである。だがこの時点では沙季はこの気持ちが何なのかについては分かっていないよう。否、この気持ちが恋であると認めてしまえば始まったばかりのこの新生活はなくなりかねない。恋であると認めたくないと考えても良さそうである。

 

 

 

まとめると浅村悠太は綾瀬沙季と兄妹的に距離が縮まっていることで嬉しく感じている。自分と似ていることもあり親近感が沸いていると言った感じ。

綾瀬沙季は誠実な兄妹定義を結んだもの浅村悠太を意識するしてしまうようになった。それは似たもの同士であり、適度な距離で接してくれる彼に対する恋心であった。

以上で「義妹生活1巻」考察・解説は終わりです。